
2025.04.11 国際女性デーに際して働く女性の健康を考える:
数の上では世界の半分を占める女性たちが、社会的な役割でもちゃんと半分を担える社会が実現されるために、社会全体で健康のジェンダー平等に取り組むことが必要であるとオルガノンは考えます。これを広くたくさんの方と一緒に考えていくため、オルガノンは3月8日の国際女性デーに際し、社会における女性の健康について継続的に調査を行ってきました。
2023年は働く男女を対象に、職場における女性の健康課題や実施している対処方法について調査(以下、2023年調査)を行いました。2024年はもう一歩進んで、管理職に就く女性を対象として、女性の健康がキャリアに与える影響とそれに対する企業の取り組みについてW societyと共同で調査白書(以下、2024年白書)を発表しました。
過去の調査についてはこちら:
2023年「働く女性の健康課題および企業の支援制度に関する調査」(オルガノン株式会社)
2024年「女性の健康とキャリアに関する調査白書」(オルガノン株式会社、W society)
2回の調査を通じて働く女性たちの健康課題や職場で受けられる支援について理解を深めてきましたが、彼女たちの雇用者である企業はどのような考えで女性従業員の健康支援を実施し、支援体制を構築する中でどんな課題を感じているのか、私たちはずっと気にかかっていました。こうした中で2025年は、経団連が実施した「『女性と健康』に関する調査」(以下、経団連調査)(1,2)にW societyを通じて協力する機会を得て、女性の健康に対する企業の考えに理解を深めることができました。
経団連企業による女性従業員の健康支援
2024年白書では回答者の65%が所属企業が提供する健康支援に満足を示しました。経団連調査でも回答した企業の約96%が女性従業員に対して何らかの健康支援を提供していると回答しており、多くの企業で女性の健康課題と支援の必要性が認知されていることに期待が感じられました(Q3)。
働く女性のニーズと提供されている制度・環境のギャップ
経団連調査において企業による女性の健康課題の支援には、休暇制度や検診・受診促進の取り組みが多い傾向が見られましたが(Q6)、一方で利用率や満足度の把握を踏まえて改善につなげるところまで踏み込めていないことも伺えます(Q11, 12)。オルガノンが行った2023年調査でも、女性回答者の45%が周囲で制度を利用している人がいない、分からないと答えており(Q6)、従業員側の視点から見てもせっかく提供されている制度が有効活用されていない状況が推測されます。一方で、2024年白書では、職場での健康課題の話しやすさや職場からの支援体制への満足度と、所属企業への満足度との間に相関がみられ、企業にとっては制度の充実だけでなく、既存制度の活用状況の理解に基づいて必要な改善を加えることに従業員満足度を高めるヒントがありそうです。

企業が女性の健康に取り組む理由と、その波及効果
経団連調査では企業が女性の健康支援を行うことのメリットを聞いています (Q2)。最大回答は「社員の生産性向上」(52.1%)、次いで「女性社員の定着率向上」(22.9%)でしたが、「会社の業績向上」と答えた企業は5.2%にとどまり、制度の対象となる女性社員への直接的な効果を評価している一方、より長期的、全社的なインパクトを見通している企業は現状ではまだ少ないようです。女性活躍に積極的な上場企業とされる「なでしこ銘柄」や女性管理職登用率の高い企業において業績や株価において優位性があることを示唆する日本での調査があります (3,4)。世界に目を向けても、国際労働機関が70カ国の企業を対象に行った調査において、ジェンダー多様性への取り組みが業績を改善する傾向にあり、経営指標にジェンダー多様性を持つ企業の約75%が5~20%の増益を報告したとの発表があります (5)。企業が実施する女性の健康の取り組みによって、持てる力を十分に発揮できていなかった女性従業員がさらに活躍できるようになることは、従業員個人の働きやすさの改善だけでなく、結果として企業のパフォーマンス向上に繋がっていくことが示唆されています。今回の経団連調査が、より多くの日本企業で女性の健康支援に対する理解と取り組みが広がっていくための新たなきっかけとなることを期待しています。
参考情報
1. 一般財団法人 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会「『女性と健康』に関する調査結果」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/023.pdf
(最終アクセス日:2025年4月11日)
2. W societyプレスリリース2025年4月11日 「経団連『女性と健康』に関する調査に協力~新年度を迎えた今、企業の健康支援体制を可視化『女性と健康』に関する調査を発表」
https://wsociety.jp/news/1293(最終アクセス日:2025年4月11日)
3. 日本経済新聞Webサイト2020年7月20日「女性生かす企業に高評価 業績との相関、投資家注目」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61637060X10C20A7TY5000/?msockid=26c6c250fe82688414b9d7c2ffec69b6(最終アクセス日:2025年4月11日)
4. 内閣府経済社会総合研究所『経済分析』第 201 号「情報開示の有無を考慮した女性活躍推進と企業業績の関係」(2021年)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/bun/bun201/bun201a.pdf(最終アクセス日:2025年4月11日)
5. 国際労働機関(International Labour Organization: ILO)プレスリリース2019年5月22日 ”Women in leadership bring better business performance” https://www.ilo.org/resource/news/women-leadership-bring-better-business-performance (最終アクセス日2025年4月11日)